2002年度谷和原村手話奉仕員養成講座カリキュラム作成<第2回コースデザイン>
(1)第一段階:コースの到達目標の明確化
- 手話奉仕員養成講座カリキュラム全体の中でどのような位置づけにあるのか?
- 手話奉仕員の養成目標は「聴覚障害、聴覚障害者の生活及び関連する福祉制度等についての理解と認識を深めるとともに、手話で日常会話を行うに必要な手話語彙及び手話表現技術を習得する」とされています。
- 学問分野からの視点として、何が本質的なポイントであるか。自分が何を伝えたいか?
- それは前回書いたように「その「日常会話」は、谷和原村における身近な「日常会話」を用いなければ「使えない」手話で終わってしまう。」というものです。
- 私たちの身近にある会話を手話で表現し、手話で受け止めることが大切と考えています。
- 今、通勤途上で読んでいる「おじさん、語学する」塩田勉著、集英社新書680円によれば、「スタジオ録音した語学テープを聴かせるやり方から、生活音や町の騒音を含め、まちまちの癖とそれぞれの速度を持ってしゃべる生活人の肉声を記録して使う教授法」=「オーセンティック・メソッド」というそうで、「コミュニケーションは、やむにやまれぬ真実の欲求から発せられてこそ身に付く、空々しい会話では身が入らない」
- こんなことは、ずっと昔から言い続けられていた訳ですが、現実問題として「地元例文」を作れる環境がなかなか整わなかったのでは、ないでしょうか?
- 受講生からの視点として、修了時点でどのようなスキルを獲得すべきか?
- ここでも前出の「おじさん、語学する」の塩田勉さんは重要な示唆を与えてくれた。「第6章 本書の方法論」は、本屋で立ち読みしてでもいいから是非お読みください。
- 195頁「じつは、語学学習の成功を左右する勘所は、つねに心の風景や内省の問題として立ち現れます。世の指南書は、一般原理や法則を教えてはくれますが、それを個人に当てはめ役立てるときに欠かせない気働きや気持ちの持ち方まで明らかにしてくれるわけではありません。」
- そして、196頁「語学の成功には、他人に頼らず、自前の流儀を編み出してゆく試行錯誤や自己点検がなによりも大切で、まず、そのことを自覚していただかなければなりません。」
- そして塩田さんは、こうした自覚が語学学習に必要な理由として「語学には、特別な性質があって、無意識化した思考パターンや生活習慣、価値観や感受性の変更を迫るからです。」と喝破されているのです。
- ちょっと長い引用になりますが、とても素晴らしい洞察と思いますので、以下に書き写します。「車の運転やゲームの規則のように、一度習得すればおしまいという習い事に比べ、語学は、それまでなじんだ心の持ち方の変革を余儀なくさせる、」「つまり、語学は、受動的暗記ではなく、考え方の回路を能動的に変えようとする努力、母語として慣れ親しんだ言葉の回路を一度捨てて、別な回路に切り替えようする決断を学習者に要求するのです。」「異質の習慣を完全に受容する覚悟をしなければなりません。しばらくの間、日本的自我を捨てて、外国語の語順に逆らわないよう自己点検しながら、読んだり表現しなければなりません。意識的点検の必要がなくなるまで、注意力を維持する(持念)ことがどうしても必要になります。」
- これらの文章の「外国語」を「手話」に、「異質の習慣」を「ろう世界の習慣」と置き換えてみれば、より分かりやすいのではないでしょうか。
- 「スキル」という意味では、私流にまとめてみれば、「この講座を通じて、手話通訳はできなくても、ろう者と共にあゆんでいく良き隣人・友達として振る舞えること」を身につけて欲しいのです。自分の言いたいことが片言でも伝えられ、ろう者の話を尋ね尋ねしながらでもキチンと聞くこと(読み取ること)ができる姿勢をもった谷和原住民が、一人でも多くなっていって欲しいのです。
(2)第二段階:受講生にどのような学習をさせるのか?
- 基本パターンは、受講生自身に、会話例文(場面設定・セリフ)を創作してもらい。
- その場面の中で<講師からの質問に答え><ろう講師と実際に会話する>という形式でフリー会話練習を積み重ねたいと考えています。
- そして、その中で必要とする単語(語彙)を増やし、伝わりやすい表現を身につけていき、さらには、奉仕員養成基礎カリキュラムにある「基本文法」に関する理解が深まればベストと考えています。
- また、今年度は、23回の講座のうち、3回は講演会を行い、そのポイント整理と感想を書くという作業をやってみたいと考えています。これは、奉仕員養成講座(基礎)カリキュラムにある(1)障害者福祉の基礎 (2)聴覚障害者活動と聴覚障害者福祉制度 (3)ボランティア活動 の3講座です。
- さらには、ろう者や手話に関する書籍を、講座期間中に最低1冊は読んでもらうこと。
- そして、これは、講座時間外学習になってしまいますが、「ろう協のイベントに参加する」ことをやってみたいです。
<眠い・・つづく>