<茨聴協大会・事前資料入手経過>

●なぜ、わざわざこんなことをしつこく書くかというと、「事前資料入手」は、手話通訳者にとって本番以上に負担の大きい作業だからです。今回も最後の最後まで気をもみました。(「気をもむ」って、”心配してオロオロすること”ネ)

●逆に言うと、事前資料がキチンと入手できれば、あとは「実力次第」。実力のある人はちゃんとした通訳ができるし、そうでない人は「それなりの」通訳となります。

●さらに言えば、「事前資料の入手」は、いい通訳ができるかどうか「以前」の問題なのです。だから「常識」「マナー」だと言われるのです。

■事前資料・情報の収集の経過

1/07火 安本さんからメール
「求む2/9大会情報」
パソコン要約筆記を担当することになったが、手話通訳関係で事前資料や情報は入っていますか? お互いに情報交換しましょう、とのこと。
(※こうした呼びかけは大変有効だと思う。手話通訳者間の事前情報交換も大切だが、当日の情報保障を担当する全ての人間(手話・パソ通・OHP等)が連携して、事前準備の不備がないかお互いにチェックし合うことは、今後も実行できるようになると良い。)
1/18土 安本さんからメール
「大会情報」
やすらぎから「大会パンフ原稿」一式が届いたとのこと。
併せて安本さんは、前泊を予約したとのこと。対応早いなぁ〜。
この頃手話関係は、毎週の講座のたびに「大会資料はどうなってる?」と菊池さんと話してた「はず」なんですが、さっぱり手に入りませんでした。しかも、ろう教育懇の観察実習1/12、大穂での実習1/18など入ってきて目の前の講座準備だけでいっぱいいっぱいでした。スミマセン。
2/02日 安本さんへメール
「大会資料こっちにも送ってくれませんか?」
本番1週間前になっても1枚の資料も手に入らず、安本さんに泣きつくことを決意。パソ通ルートの資料入手は、「正規入手」とは言い難いけれど、これも通訳者の「情報収集力」の一つ、と割り切って依頼しました。
(※Eメール(インターネット)のおかげでこのような作業が大変簡易に行えるようになった。送っていただいた資料は全50ページを超えるものだった。圧縮ファイルで送っていただけば、こんな分厚い資料も簡単にやりとりできてしまう。手話通訳者にとっての事前資料の重要性を考えると、Eメールの活用は不可欠になってきていると思う。また、インターネットにおけるホームページ検索で、事前学習の参考資料や会場地図、宿泊の予約に至るまで、家にいながらにして比較的容易にできるようになっていることも、僕がパソコンの活用を薦める所以である。)
2/03月 資料をコピーの上、実習担当受講生4名に郵送。 全57ページの資料でしたので、受講生にプリントアウトさせるのはかわいそうかなとの親心から、サラリーマンの強みというか会社のメチャ早いコピー機でこっそりコピーし郵送しました。届くのが明日としても5日間の勝負。けっこうきついなぁ〜。受講生が早く自分の担当原稿決めてくれるといいんだけど、と思いながらも「いかんいかん手を出しすぎてる」と反省。やっぱ大会通訳は失敗が許されないと思うとこっちが焦ってしまう。
2/04火 安本さんからメール
「司会進行表は?」
進行表(司会者の言葉の原稿)がまだ、来てないです。これが、届いたら、無茶苦茶心強いのですが、前日かなぁ〜。」とのメールをいただき、おお、そうそう進行表それそれ、それ手に入れなきゃ!と焦る木下。
2/06木 実行委員会からは事前に資料を手に入れることができないことが判明 「講師からの指示がないので原稿は渡せない」とのメール。菊池さんを通じて依頼してるはずが、行き違ってるらしい。無茶苦茶焦る!やっぱパソ通資料を配ったのはまずかったか!
(※自慢じゃありませんが、木下は「連絡調整」がとっても苦手です。まず電話連絡ができない、FAX読まない、増して「会って相談」絶対不可能だと思います。それなのに何故かEメールなら連絡つきます。あと会社に直接電話くれるという強硬手段も案外有効です。そんなわけで実行委員会への連絡は全部菊池さんに押し付けてました。ゴメンナサイ。やっぱ自分でも猿田さんにちゃんとお願いするんだった…。ホントこういうの苦手なんだよねぇ〜オレ、反省です。)
2/07金 安本さんからメール
「追加資料届きました。」
「来賓者紹介2/7版1枚、電報2枚、表彰状3枚、謝辞1枚、議事報告原稿(の一部?)1枚」を送ってくれました。今回は時間がないのでテキストの原稿をそのままメール本文に入れて実習生にメール。4人がメール読んでくれるといいんだけど…。
大会ものの通訳にはこうした「ギリギリまで変更のある情報」というのが沢山あります。来賓は当日になってみないと本人が来るのか代理は誰が来るのか明らかになりませんし、祝電も当日確認事項です。つまりこうした原稿を手に入れるのは「気休めに過ぎない」のであって、当日実際に舞台で通訳するギリギリまで情報の変更に対応できるように努力する必要があるのです。例えば、受付と舞台裏との連絡係に「通訳にも声を掛けてください」とお願いしておくとか、開会前には必ず常に司会者の近くにいて、入ってくる情報をのぞき見せてもらうとか…。

●これが前日までのやりとりです。これ意外にも20本以上のメールのやりとりがありました。「負担の大きさ」を実感していただけるでしょうか?

●本来、実習なのでこれらのやりとりは「実習生自身」がやるべきだったのでは、という見方もあると思います。また、第1回、第2回実習では、こうしたサポートを全くやらずに実習生にお任せでしたので、「ズルイ・えこひいきだ!」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。(受講生仲間はたぶんそんな風に思わないと思うんですが…先に自分達も大変な思いして実習やってますから。むしろ「講師・木下の反省」として、です。)

●僕は、「もともと大会通訳は、今の実習生の実力、というより経験からは、無理のあるレベル(事前準備・調整の大変さレベル)の通訳であることは、承知していたので、第1回・第2回と同レベルになる程度のサポートを行うのはやむを得ない」と考えていました。
 通訳現場に重い・軽いという見方をしたのではなく、第1回はそもそも講座として独自に開催した講演会でしたので、条件をこちらの意向で自由に動かし得る、また講師たちの配慮もある実習でした。第2回は、サ連の会議でしたが、登録通訳者が別に配置されている場所でのサブ通訳として行いましたし、内容も比較的身近なものでした。
 それに比べると今回の大会通訳は、来賓挨拶や大会決議など内容的にも難しく、ただ言葉どおりに通訳したのでは全く通じない恐れがありますし、対象者も県ろう協役員ということでプレッシャーも格段に大きい実習でした。そうなるとやはり「事前資料の手配」については、講師として最低限のサポートが必要だと考えたのです。

●士の連中は、当日に原稿をもらって開始までの1時間くらいで準備をします。僕も2年前はそんな条件で安藤さんの読み取り通訳をやりました。ですから、最終的には、そういう厳しい条件でも通訳できる能力が求められると思いますが、今回の実習は、それこそ初めての経験でした。むしろ、こうした経過を詳しく紹介することによって逆に実習生に「事前資料の入手」のためには、いつまでもただ黙って待っていてはダメなんだ、ということを知っていただけたらいいなと思っています。そして同じ事を、大会を運営する地元ろう協の皆さんと一緒に理解し合えたらいいなと願っているのです。

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