2002年度茨城県手話通訳者養成講座2(応用・実践)  <実践第8回>

2003.2.8(土)13:30〜16:00

<カリキュラム項目>

・2/2(日)手話通訳実習(2)−担当;つくば市・阿見町・石岡市グループ(5名)の反省
・2/9(日)手話通訳実習(3)−担当;森組(神栖町・土浦市・八郷町・取手市;4名)の事前打ち合わせ

<講座の流れ>

1.13:30〜 2/2の「サ連代表者会議」通訳実習を振り返る(一人20分×5名=100分=1時間40分)

(1)ろう講師及び会場でチェックしてくれた他のろう者から一人一人に対する<全体的な評価>をまず先に話してもらう。
kaz ・単純な表現間違いが多い。
・意味をまとめすぎている。
・身体が揺れる。
・指先の動きが硬い。
・「毎週水曜日」の手話?・「減らす」の手話?・「課題」の手話?・「意見」の手話?
・縦方向(上下)のバランスが悪い。見ているろう者が視線を大きく上下させないと読めない。
oda ・上下に身体が揺れる。
・髪の毛が顔にかかって、表情が見づらかった。
・腕まくりするなら、通訳に立つ前にキチンと準備する。腕まくりしながら通訳するのは見づらい。
・休憩への入り方に問題ある。通訳に立ったとたんに「では休憩に入ります。」となってズッコケていたが、あれは通訳者自身の感情であって通訳すべき情報とは全く関係がない。
・また、他の受講生にどうしたらいいか確認する時は、最低でも見てるろう者に断りを入れることが必要。そうでなければ通訳者の側からの話しかけはできるだけ避けたい。
・間が空いてしまった時の会場の雰囲気(ペチャペチャしゃべっていて始まりそうにないとか、まだ資料を読み終わってない様子等)を上手く伝えられると良い。
inu ・表情がない。
・会場から「(ろう者の参加が多くて)羨ましいわねぇ〜」と声が挙がった時、<わぁ〜>としか表現できてなかった。しかも通訳者自身が笑ってしまっていた。キチンと情報を通訳することが先決。
・会議通訳の交代は、「時間の切れ目」よりも「話し(内容)の切れ目」を重視して。
・まとめて(要点だけ)通訳しているように感じる。もっと発言者の雰囲気(表情)を伝えて欲しい。
・怒っているような表情がある。(元の情報にはない)
・「間」の取り方をもっと工夫すると良い。
・「ボランティア」の手話?
kak ・交代の仕方に工夫が必要。
・「啓発」の手話?
・誰の発言か?を分かるように通訳すべし。
・「変わってきた」の表現?
・視線が不安定。もっと落ち着いて。
・表情が足りない。
nod ・口話が大げさすぎる。
・聞こえてきた言葉を片っ端から手話に換えてる感じ。もっと「通訳(翻訳)」して、見ているろう者の視線を考えて表現できると良い。
・話しの内容に通訳者が先に笑ってしまう場面があった。
・もう少し肩の力を抜いて、話者の雰囲気を伝えられると良い。
(2)それを聞いた実習生本人が、<その評価をどう受け止めるか>を考えてもらい、さらに講師と議論しながら考えを深め、自分の中に吸収できるようにする。
  例えば、
   ・講師の評価を素直に受け止められたか?
   ・自分ではこんなつもりで表したのだが…。(反論)
   ・評価で言われてることが分からない(疑問⇒質問する)
(3)ビデオ自体は、後日実習生ごとにダビングして送付します。<それぞれ自宅でじっくり見て、自己チェックと練習>をしてもらう。
<参考;木下のビデオ・チェック・メモ>
0:00:00:00 1時29分 in 司会説明
0:01:04:23 支部長あいさつ
表現;日本語の音声を拾って、そのまま単語レベルで並べるだけになってる。
口話も中途半端。口話もコミュニケーションの一部という意識でやると良い。
 前回、実習をやってもらったTaさんと似たタイプの表現。単語はそれなりにでているのだが、意味がつかめない。
 「誰が」「誰に対して」「何を」といった文章の構造がうまく表現されていない。単語を並べただけでは、手話で意味を伝えていることにはならない、
 こうした表現の問題点をうまく指導できない。(反省!)
 手話に対する根本的な誤解があるような気がする。表現されているのが「手話付き音声語」になっているように感じる。それは「日本語対応手話」というのでもないように思うのだ。日本語対応手話なら助詞や助動詞、接続詞などがもっと口話で強調されるように思う。つまり「日本語そのまんま」でもない表現なのだ。
 こうした手話表現は、日本語の語順で「かいつまんで」に手を動かすことが「手話」だという受け止めがあるのではないだろうか。そして、一番問題なのは、そうした「指導」がけっこうまかり通っている気がするのだ。
例;
「サークル/代表/者/集まる/ありがとう」
「この/場/とって(ここの場におきましては)…手話/サークル/連絡…会/起きる(発足?)/まだまだ/(この間に文のつながりを表す必要がある。例「けれども」あるいは「だから」)十分/議論/(ここも文が切れているにもかかわらず間合いがない)今日/第3回/目/代表/会/始める(今日は第3回目の代表者会議です。)…茨城/県/内容(茨城県には)/手話/サークル/連絡/会/まだまだ/起きて/まだ(まだできておりませんけれども)。県南/場(県南でも)/準備/進める/たい/思う。ろう(聴力障害者と)…通訳/者/協会、手話/サークル、3つ/連絡/進める/たい/思う(3団体が列挙されていることが表現されていない。3本指だけでは表せてない)。十分/議論/終わる(して?)、進める/たい/思う/ありがとう(十分話し合いをして進めていただきたい。)」
0:03:27:19 1時32分 サークル自己紹介
例「マイクを回してもらってよろしいですか?」=マイク/しゃべる/みなさん
⇒例えば、<マイク/指さし(うなづき+目線は「それ」とか「これ」とか「どこ?」とか)/隣へ回す/お願い>としたら「マイクを」ということが表現されるのだが…。
 この例で感じたのは、「自分の表現が相手から見てどのように読みとれるだろうか?」とか「自分の表現が間違ったりすることへの自覚、むしろ違和感」のようなものが感じられていないように思うのだが、どう指導したら良いのだろうか? 通訳者仲間ではよく「この表現じゃ分からないよね」という会話があるのだが、これは当然「分かる・分からない」の区別がお互いの頭の中の共通イメージとして持てるから成り立つ会話なのだけれど、それを受講生に「指導」するには、どうしたらいいんだろうか?
 横で他の受講生がサークル名を書いた紙を掲げていた。あれは誰に見せようとしていたのか?ろう司会者たちからは遠くて見えないように思えるし、見学者席からは紙自体が見えないし…。
0:07:23:27 1時36分 事務局自己紹介
 「誰の自己紹介」なのかということが表現されていない。最低限でも目線をやるとか、指さすくらいは必要ではないか?
0:08:24:09 1時37分 意味のない笑い?
「笑い」も重要な情報です。ろう者は手話通訳者の表現した情報を見て(得て)初めて「笑える」のです。このことってものすごく大切なことなのです。★★★
0:08:34:14 1時37分 ルール説明
「今日見学者の方もお越しいただいてますね。その方たちの中で私語をされたりご意見を言うというのは今日のところはご遠慮いただきたい。それから県南手話通訳者養成講座の中で受講生が手話通訳の実習として来ております。少し目障りになってしまうかもしれませんけれども、ご理解いただいてご協力をお願いいたします。」
⇒「今日」(片手で表現するのは単なる間違い?)
⇒「少し目障り」で通訳者が笑っているのは「通訳者自身の感情」であり、菅沢さんとしては、(冗談まじりとはいえ)真面目にみんなに詫びた上でユーモアとして「目障り」と話しているわけです。そこをキチンと表現しなければなりません。話しを聞いて「通訳者自身が先に笑って」しまっては、ろう者は「何がおかしいのか?」分からないではありませんか!
0:09:50:00 1時39分 No 資料説明「手話サークルに対する方針」
 最初、肩の力が入りすぎ⇒読みとっていてものすごく疲れる(⇒時間が経つにつれて落ち着きました)
 口話が大げさすぎて見づらい⇒疲れる、不愉快
 「つけたのは間違いで省いてください」??
 もっと見る人の立場に立って「簡潔に」分かりやすく表現する工夫を。
 「代表者」(2本指?)
0:13:03:22 「まあ、第1回の内容としてはこれぐらいだと思いますが、皆さん代表者の方々、第1回、第2回、第3回ずーっと同じように参加していただいている方もいらっしゃいますし、1年ごとに代表者が代わってしまう団体もあると思いますので、それぞれ1回、2回、3回、話し合いの内容がスムーズに進められるようにと準備しておりました。それぞれここまでスムーズに進んできましたので、私たちとしても安心しております。」

「これぐらいだと思います=まあ/第1回/内容/うんうん/(「さっき、説明」を補足しないと意味通じない)同じ同じ」⇒見ているろう者の立場で補足

「みなさん/代表/グループ/グループ/グループ、/第1回、/第2回、/第3回、/同じ/代表者/いる/いる/場合/ある」これで意味が通じるだろうか?
⇒最低限でも「参加」が必要

※表現している自分を客観的に(ろう者の視線にたって)見つめられる「外なる眼」を持てるようになろう。つまり言葉というのは、ある意味(意図)を表そう(伝えよう)とした時、思いついた言葉を頭から声に出したのでは、余程文才のある人でなければ、おそらくかなり分かりにくい文章でしか表せないと思う。
 つまり、頭の中で「ろう者の視線で推敲」し語順や単語を編集したものを表現することが求められると思うのだ。
0:13:49:28 「次、第2回の説明してください。…秋山さん」どうして笑ってるの?通訳者が先に笑ってどうするの?ジョークを通訳できて初めて「ろう者と一緒に」笑えるはず。ここでは、「司会者が第2回のことは分からなくて、いきなり説明を秋山さんに振った」ことが笑いの原因だったのです。どう表したらいいだろうか?
秋山さん第2回説明
「議事録」
「平成14年」
「小野川公民館」⇒「同じ」と表した方が意味がつかみやすい。
「2階」⇒「指さし」ではなく「2/上」の方が分かりやすい。
「狭い部屋で討議することになってしまいました。」⇒全て音声語どおり⇒狭いだけで十分
※音声語を聞いて片っ端から手を動かしても、ちっとも分からない。キチンと自分の中で理解したものを「編集」した上で、表現しなければならない。⇒逐次通訳の練習をやったら良いのではないか。
0:14:51:00  ちょっと長い引用ですが、次の文章をみんなで練習してはどうかと思います。逐次通訳だったらどってことない文章だと思うんだけどなぁ〜。

「助言者として先ほどの、講演いただいた勝田さんに一緒に会議に参加していただき、講演に引き続き感じたこと等を発言していただいたり、質問等交えながら進めるという形になりました。
第1回目の場合は、いろんなサークルごとの悩みをはき出すような場所ということだったのですが、2回目は設立案としまして、県南サークル連絡協議会?茨城県南支部としてサークル連絡会を設立するにあたってどういう形で進めていくかの案をお配りし、それについて疑問や分からない点などについて質問を受けるという形で進めました。
しかし、本当ならば設立案っていうのをその場で決議する場としてやりたかったんですけれども、なかなか将来的にどうしたらいいのかがあいまいで、どんな連絡会になるのかっていうイメージがあいまいだったので、その場ですぐに決議することができませんでした。
そのためそれぞれのサークルに持ち帰って、もう一度それぞれで話し合っていただいてから次の集まるときにそれぞれ報告して出そうと言う形になりました。
それで今回第3回、本当であればサークルで持ち帰った内容を今日持ってきていただいて報告いただくという形になるんですけれども、去年の1月から今日の、2月ですか、2月の間、1年間たってしまいましたので、さらにブランクがありますが、みなさん話し合った内容をうまく覚えていらっしゃるかどうか分かんないんですけれども。
しかも、代表者が代わっているところもありますね、去年と代表者が代わっちゃってるところも多いと思います。ちょっとどこまで決められるか分からないんですけれども、今日、今回、もう一度改めて説明をさせていただいてから、少しずつできるところまで進めていきたいと思っております。」
0:18:08:07 kak みんな最初ものすごく慌ててる。
0:20:25:00 再開。表情堅い。「第2回が終わってそれぞれサークルで話し合っていただけたでしょうか?」
「さくらさんではどうですか?」「去年参加しておりませんので…」話者が代わっているのに、そのことが示されていない。(会議通訳の基本)
もっとゆっくり表現できるとよい。
「サークルとしては3回目ですが、私は初めて」⇒前半を聞き漏れた。サポート者補足すべし。
「先日聞いたくらいで」⇒「くらい」は「聞いただけのわずかな理解」という意味
「次の人」と表したのは良いが、目線がついてないので「(話者が)次に」と発言したように読める。
「この会議があることはわかっていますが、この後に会議をしたかどうかは覚えがありません」⇒「この後に」は将来でなく、「前回の会議以降に」という意味。
0:24:40:00 「もしこういうりっぱな議事録が、これは確か去年開催されたときの議事録だと思うんですね、これをその時点で作成されたときに各サークルにいただいていたら、もっと議論する方法もあったんじゃないかな、これ今いただいてもちょっと…。代表が代わったり…」⇒スミマセン取りあえず現時点でビデオチェックはここまで(ノートから転記している時間がなくなってしまった!

◆今回の講座を通して気付いたことに、9回というカリキュラムの実習課程の中で3回の実習を組むということは物理的に無理だったということです。
 つまり、準備=1講座(いきなり舞台に立たせるのはやはり無理があった。)→実習=1講座→振り返り(反省)を1クールとすると実習3回×3講座だけでカリキュラムが終わってしまうことになるのです。
 実践課程での実習の必要性を強調しながら、実際の時間数がそれに見合ったものになっていないように思うのです。
 まして、これまで書いてきたように「ろう講師が実習に関わることの難しさ」をキチンと把握し、それを乗り越える努力と工夫がなければ、通訳者養成はどんどんろう者の手から離れ、通訳者(聴者)主導になっていってしまうのではないでしょうか?

(と、このように書いたからと言って、チェックが途中で終わってしまっていい訳ではありません…(-_-;))
意見
0:25:42:19 藤代
0:26:29:20 千代田町・山ゆり
0:26:58:00 牛久
0:27:20:08 てしろぎ
0:28:25:24 竹園
0:30:19:00 kaz 司会;
「意見」
秋山;
「行事」「連絡会・サ連」(表現の統一)
0:35:19:19 司会;
「代表」
0:36:40:00 「4月発足の予定でしたが…」どうして通訳者が先に笑ってしまうのだろうか?
通訳したものを見て笑うのは、ろう者なのに…。
0:41:10:00 od
0:41:42:00 「休憩に入ります。」で笑う。それは、”自分が交代して、さあ通訳するぞぉ〜と思ってたら、いきなり休憩になってしまって、ずっこけた”という『通訳者の感情』なのでしょう。
0:51:00:00 in
1:01:35:00 no
1:12:20:00 kak
1:21:20:00 kaz
1:30:50:00 od
0:00:00:00 3時23分 od
0:06:10:00 3時39分 in
0:17:35:00 3時50分 no
0:28:30:00 4時01分 kak

2.15:10〜第2回実習についての総括的な反省

<最初の主催者へのあいさつ>
⇒確認事項・質問事項などを予めまとめておいて簡潔に話す
<事前打ち合わせのマナー>
⇒ろう者と一緒のイベントなのだから手話を付けて欲しい。

⇒手話通訳者は「黒子」であるので、打ち合わせの場所などももっと主催者に気を遣って欲しい。
(受付は、参加者が最初に来る場所であり、その脇で打ち合わせるのはスタッフに迷惑がかかる。)

⇒当日配布された「第2回議事録」のチェックが遅れた。
<立ち位置と方向>
・今回は、派遣通訳者がメインで実習生はサブの位置になった。サブ通訳の役割は「見学者に見やすいように」というものだったと思うが、最初はビデオカメラを向いて通訳していた。

・また、後半は、ろう者がキチンと見てくれるようになったが、特定のろう者に偏ると負担になる(ずっと見続けていなければならなくなる)ので、会場全体のろう者に配慮して通訳できると良い。

・会議通訳ということで、発言者の位置が移動した場合の通訳にもっと配慮が必要だった。発言者の位置を確認し、ろう者にも伝えて、「誰の」発言かという情報を伝えることが大切だ。特に「やりとり」(司会と発言者で頻繁に意見を言い合うような場合)は、指さしている余裕がないので、ロールシフトを用いて「話者が誰か?」を明らかにするような表現の工夫も付け加える必要がある。
<終了後のふるまい>
・スタッフの片づけの邪魔にならないようにまず自分たちの荷物の移動を行う。

・その上で、通訳終了の確認(今回は派遣通訳者がいたので不要)&挨拶をして、その上で反省等を行う。

3.15:30〜16:00第3回実習の事前打ち合わせ

通訳者養成カリキュラムに戻る> <トップページに戻る